転移・再発乳癌について

ミルクの管(乳管)から飛び出した癌細胞が血管やリンパ管に紛れ込んで全身を巡り、肺や肝臓、骨などで芽を出して大きくなってしまうことを転移と呼びます。
初めて乳癌と診断された時点で転移を起こしてしまっている場合はStage IVと診断されます。

Stage IVの乳癌と、遠隔転移で再発した乳癌は厳密には異なりますが、共通する部分も多いので、今回はまとめて「転移・再発乳癌」としてお話しします。

乳癌が遠隔転移を起こしてしまった場合、残念ながら今の医療技術では完全に治すことができません。乳癌の進行を治療で抑えつつ、いかに長く今の生活の質を維持するかを最優先に治療選択をしていくことになります。
少しでも体の中の癌を少なくするために抗癌効果の高い抗がん剤を使ったとしても、副作用等で生活の質が落ちてしまっては意味がないといった考え方になります。
癌がこれ以上大きくならず、生活の質がそこまで下がらない治療をなるべく長く継続することができればそれは治療成功ということになります。
また、手術で乳房内のしこりを切除したとしても、転移先のしこりが残っていますし、まだ芽を出していない癌細胞が全身に隠れているため、手術をすることは最終的な命の長さには影響しないとされています。

では、転移・再発乳癌と診断されたら、治療をする意味がないのでしょうか。
いいえ。そんなことはありません。たまに、「私はもう十分生きたから、このまま治療せずに過ごしたい」や、「苦しい治療はやらずに命を失ったとしてもそれでいい」などと考えられる患者さんがいます。
しかし、厳しいことを言うと、治療をしなかったからといって、すぐに、楽に人生の幕を閉じることができるわけではありません。しこりが大きくなって皮膚を飛び出してしまったら染み出しや出血のケアが必要になりますし、骨に転移をすれば医療用麻薬による痛み止めや、転移による骨折を起こせば介護が必要になる可能性があります。そういった大変な状況をなるべく先送りに、そしてなるべく短くするという点で治療をすることは意味があります。少しでも長く、乳癌と診断される前の生活になるべく近い生活を維持することが最大の目標になります。

また、冒頭に治すことはできないと書きましたが、奇跡のような症例はあります。転移・再発乳癌と診断されてから何年、何十年も生きて、寿命を迎えて亡くなる方も存在はしますから、あきらめず、できる治療を行っていくことをおすすめします。

詳しい治療法については別記事でまとめていきますのでそちらをご覧ください。

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