乳がんと一言でいっても、実はすべて同じ性格のがんではありません。
人の性格がそれぞれ違うように、乳がんにもいくつかのタイプがあります。
このタイプによって、効きやすい薬や治療の方法が変わります。
乳がんのタイプを分けるときに、特に重要なのが次の2つです。
・女性ホルモンを食べる口があるか(ホルモン受容体を持っているか)
・増殖命令を受け取るアンテナがあるか(HER2(ハーツー)タンパクをたくさん持っているか)
この2つの組み合わせによって、乳がんは大きく4つのタイプに分けられます。
女性ホルモンを食べる「口」=ホルモン受容体
乳がんの細胞の中には、女性ホルモン(エストロゲン)をエサにして増えるものがあります。
女性ホルモンは体の中を流れている栄養のようなものです。
そして、がん細胞の表面には、その栄養を取り込むための口のような部分があります。
もしこの口がある乳がんの場合、女性ホルモンを食べることでがんが成長します。
そこで治療では、
・体から女性ホルモンを減らす
・がん細胞のホルモンを食べる口をふさぐ
といった方法(ホルモン療法/内分泌療法といいます)で、がんにエサを与えないようにします。
この口を持つタイプの乳がんは、ゆっくり成長することが多く、再発を予防するため手術のあとに5年から10年間ホルモン療法を続ける必要があります。
増殖命令を受け取る「アンテナ」=HER2(ハーツー)
一方で、がん細胞の中には、増殖の命令を受け取るアンテナをたくさん持っているものがあります。
このアンテナは、体の中から送られてくる「増えなさい」という信号をキャッチします。
普通の細胞にもアンテナはありますが、あるタイプの乳がんでは、このアンテナが異常に増えています。
その結果、がん細胞は
「増えろ!増えろ!」
という命令をどんどん受け取ってしまい、勢いよく増殖してしまうのです。
このタイプの乳がんでは、抗がん剤に加えて、アンテナを狙い撃ちして働きを止める薬が治療(抗HER2治療)に使われます。
この2つの組み合わせで4サブタイプに分かれる
乳がんは
・女性ホルモンの口
・増殖アンテナ
この2つの有無によって、4つのサブタイプに分かれます。
①ホルモン受容体陽性タイプ
女性ホルモンの口がある乳がんです。
女性ホルモンをエサにして増えるため、ホルモンの働きを抑える薬が治療の中心になります。
乳がんの中では最も多いタイプです。
②ホルモン受容体陽性+HER2陽性タイプ
女性ホルモンの口もあり、増殖アンテナも多いタイプです。
この場合は
・ホルモンの治療
・アンテナを止める薬
などを組み合わせて治療を行うことがあります。
③HER2陽性タイプ
女性ホルモンの口はありませんが、増殖アンテナが多い乳がんです。
このタイプでは、アンテナの働きを止める薬が非常によく効くことが知られています。
現在では治療法が大きく進歩し、以前より治療成績が大きく改善しています。
④どちらも持たないタイプ=トリプルネガティブ乳がん
女性ホルモンの口も、増殖アンテナも持っていないタイプです。
そのため、ホルモンの薬もアンテナの薬も効きません。
治療の標的となるものがなく、主に抗がん剤などが治療の中心になります。
このタイプをトリプルネガティブ乳がんと呼びます。
乳がんの中でも悪性度が高く、再発リスクも最も高いといわれています。
ただし最近では、このタイプにも新しい治療法が増えてきています。
乳がんは「一つの病気」ではない
ここまで見てきたように、乳がんにはいくつかのタイプがあります。
つまり、乳がんは一つの病気の名前ではあっても、実際には性格の違う病気の集まりのようなものです。
そのため、乳がんと診断されたあとには
・どのタイプなのか
・どの治療が合うのか
を調べることがとても重要になります。
このタイプによって、治療の選び方や治療の期間も変わってきます。
タイプを知ることは治療の第一歩
乳がんと診断されたとき、まず多くの方が知ることになるのがこの「サブタイプ」です。
最初は難しく感じるかもしれませんが、とても大切な情報です。
なぜなら、乳がん治療は
そのがんの性格に合わせて戦い方を決める
からです。
自分の乳がんがどのタイプなのかを知ることは、これからの治療を理解するための大切な第一歩になります。


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