乳がんにある4つのタイプ。
その中の一つが HER2陽性乳がん です。
このタイプの乳がんには、
増殖命令を受け取るアンテナ のようなものがたくさんついています。
これがHER2です。
体の中では、細胞が勝手に増えすぎないように、さまざまな信号がやり取りされています。
「増えていいよ」という信号もあれば、
「もう増えなくていいよ」という信号もあります。
細胞はその信号を受け取りながら、必要なときだけ増えるように調整されています。
しかしHER2陽性乳がんでは、この仕組みを利用して大きくなります
。
増殖命令を受け取るアンテナ
HER2陽性乳がんの細胞には、
HER2(ヒト上皮成長因子受容体2:Human Epidermal Growth Factor Receptor 2)
というタンパク質がたくさん存在しています。
HER2は、細胞の表面についている受容体の一種です。
受容体とは、外からの信号を受け取る装置のことです。
イメージとしては、細胞の表面に立っている
アンテナのようなものです。
体の中から「増えてよい」という信号が出ると、このアンテナがそれを受け取り、
「増殖せよ」
という命令を細胞の中に伝えます。
アンテナが多すぎる状態
通常の細胞にもHER2はあります。
しかしHER2陽性乳がんでは、このアンテナが 異常に多く作られてしまう ことがあります。
するとどうなるでしょうか。
アンテナが多いほど、増殖の信号を受け取りやすくなります。
その結果、がん細胞は
「もっと増えろ」
という命令を強く受け取るようになり、活発に増えていきます。
これがHER2陽性乳がんの特徴です。
昔は治療が難しい乳がんだった
かつてHER2陽性乳がんは、比較的進行が早く、再発しやすいタイプでした。
しかし現在は状況が大きく変わっています。
理由は、HER2を狙った 分子標的薬 が開発されたからです。
アンテナを狙う治療
HER2陽性乳がんでは、このアンテナが治療の的となることが分かったのです。
このアンテナを狙った治療が
抗HER2薬(抗HER2抗体)
です。
代表的な薬として
・トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)
・ペルツズマブ(商品名:パージェタ)
※現在は点滴ではなく太ももに注射するタイプ=トラスツズマブ ペルツズマブ ボルヒアルロニダーゼアルファ(商品名:フェスゴ)が主流
などがあります。
これらの薬は、HER2というアンテナにピンポイントで結合し、
・増殖の信号を伝えにくくする
・免疫細胞ががんを攻撃しやすくする
といった働きをします。
つまり、アンテナを標的にして がんを狙い撃ちする治療 です。
治療成績は大きく改善している
抗HER2薬の登場によって、HER2陽性乳がんの治療成績は大きく改善しました。
現在では
「治療の効果が十分に期待できる乳がんの一つ」
と考えられるようになっています。
抗HER2薬は、抗がん剤と組み合わせて使われることが多く、
手術の前や後に治療として行われることがあります。
不安な気持ちも大きいと思いますが、
現在の乳がん治療は大きく進歩しています。
主治医と相談しながら、自分に合った治療を一歩ずつ進めていきましょう。

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