乳がんと告知されたときの反応は、人それぞれです。
悲しみに暮れる人もいれば、気丈にふるまう人、怒りや不安に押しつぶされそうになる人もいます。
でも、多くの方に共通している思いがあります。
「私はこれから、いったいどうなるの?」
この記事では、乳がんが見つかってから治療を卒業するまでの流れを、6つのフェーズに分けて解説します。
全体像がわかると、先の見通しが立ち、少し気持ちが落ち着くことがあります。
まずは「乳がん治療はこう進んでいくことが多い」という、全体の地図を一緒に見ていきましょう。
※この記事は、乳がん治療のよくある流れを紹介するものです。病気のタイプや広がり、年齢、体の状態、希望する治療によって順番や内容は変わります。実際の方針は、主治医と相談しながら決めていきましょう。
乳がん治療の6つのフェーズ
乳がん治療は、短期間で終わる方もいれば、ホルモン療法を含めて5〜10年ほど付き合っていく方もいます。
内容も、手術、抗がん剤、分子標的薬、放射線治療、ホルモン療法などさまざまです。
そこで、乳がん治療を次の6つの段階に分けて考えてみましょう。
フェーズ1
しこりが見つかってから、乳がんと診断されるまで
フェーズ2
精密検査を受けて、治療方針を決める
フェーズ3
手術、または手術前の治療を受ける
フェーズ4
手術後の治療(再発予防)を受ける
フェーズ5
治療後の通院(見守り期間)
フェーズ6
乳がん治療卒業後
ここから、それぞれを順番に見ていきます。
フェーズ1:しこりが見つかってから乳がんと診断されるまで
この時期は、
- 自分でしこりに気づく
- 検診で「要精密検査」と言われる
ことから始まることが多いです。
近くのクリニックや精密検査施設を受診し、マンモグラフィや乳房超音波検査を受け、必要に応じて針生検を行います。
針生検とは、針を使ってしこりの一部を採取し、顕微鏡で調べる検査です。
この検査で乳がんと診断されると、告知を受けることになります。
多くのクリニックでは手術や抗がん剤治療までは行わないため、実際の治療は、より大きな病院に紹介されることが一般的です。
この時点ではまだ、
- 手術が先なのか
- 抗がん剤が必要なのか
- ホルモン療法になるのか
までははっきりしないことも多く、不安が最も強くなりやすい時期かもしれません。
フェーズ1で経験すること
- 乳がん検診や健診で「要精密検査」になる
- 自分でしこりに気づく
- 精密検査施設を受診する
- マンモグラフィ、乳房超音波検査を受ける
- 針生検を受ける
- 「乳がん」と診断される
フェーズ2:精密検査を受けて治療方針を決定する
治療を行う病院に紹介されると、次は**「あなたの乳がんの詳しい情報」を集める段階**に入ります。
この時点でまず大切なのは、次の2つです。
- サブタイプ
- しこりの大きさや広がり
サブタイプは、乳がん治療の方向性を決めるとても重要な情報です。
また、しこりの大きさや広がりによって、手術が先になるか、薬が先になるかが変わってきます。
必要に応じて、次のような検査を追加で行います。
- MRIで乳がんの広がりを詳しく確認
- CT、PET-CT、骨シンチグラフィなどで遠隔転移の有無を確認
- 血液検査、心電図、心エコー、胸部レントゲン、呼吸機能検査などで全身状態を確認
こうした情報をもとに、現時点でのステージが決まります。
そして最終的に、
- 先に手術をするか
- 先に抗がん剤や分子標的薬治療を行うか
を主治医と相談して決めていきます。
フェーズ2で経験すること
- 治療を受ける病院に紹介される
- MRI検査を受ける
- 必要に応じて転移の検査を受ける
- 全身状態を調べる検査を受ける
- ステージが決まる
- 手術が先か、薬が先かを決める
フェーズ2で確認しておくとよいこと
- サブタイプ
- しこりの大きさ
- 乳頭との距離
- 遺伝学的検査が必要か
- 乳房再建を希望するか
- 妊娠の希望があるか
- 手術が先か、薬が先か
フェーズ3:手術と手術前の治療
この段階で、いよいよ本格的な治療が始まります。
乳がん治療には、大きく分けて
- 手術が先のパターン
- 薬が先のパターン
の2つがあります。
1. 手術が先のパターン
ホルモン陽性HER2陰性乳がんでは、先に手術が選ばれることが多いです。
ただし、しこりが大きい場合や、先に薬で小さくしたほうがよい場合には、手術前に薬物療法を行うこともあります。
手術では、多くの方が次の2つで悩みます。
- 乳房全切除術(全摘)
- 乳房部分切除術(部分切除)
どちらがよいかは、
- しこりの大きさ
- 広がり
- 乳房とのバランス
- 放射線治療の可否
- 本人の価値観
などをもとに決めていきます。
2. 薬が先のパターン(術前薬物療法)
HER2陽性乳がんやトリプルネガティブ乳がんでは、近年、
- 抗がん剤
- 抗HER2治療
- 免疫療法
などを手術の前に行うことが増えています。
これは、がんを小さくして手術しやすくするだけでなく、
薬がどれくらい効いたかを見る意味もあります。
治療は外来通院で行うことが多く、一般的には
- 1〜3週間に1回の通院
- 3〜6か月ほど治療
という流れになります。
その後、MRIや超音波検査で治療効果を確認し、手術に進みます。
フェーズ3で経験すること
- 手術が先か、薬が先かが決まる
- 手術が先なら術式を決める
- 薬が先なら治療内容を決める
- 治療が本格的に始まる
期間の目安
- 手術入院:数日〜1〜2週間程度
- 術前薬物療法:3〜6か月程度
- 通院頻度:1〜3週間に1回程度
フェーズ4:手術のあとの治療(再発予防)
手術が終わると「これで治療終了」と思いたくなりますが、
実はこの段階で、手術で取った標本を詳しく調べた最終病理結果が出ます。
これによって、
- 最終的なステージ
- サブタイプ
- 再発リスク
がより正確にわかり、術後治療が決まります。
このフェーズの目的は、手術で取り切れなかったかもしれない**目に見えないがん細胞(微小転移)**を減らし、再発を防ぐことです。
術後に行う治療は人によって異なりますが、代表的なものは次のとおりです。
- ホルモン療法
- 抗がん剤
- 分子標的薬
- 放射線治療
よくある術後治療
- ホルモン療法:ホルモン陽性乳がん
- 抗がん剤:ホルモン陰性乳がん、高リスク症例など
- 分子標的薬:HER2陽性乳がん、BRCA変異陽性の一部など
- 放射線治療:部分切除後、リンパ節転移がある場合など
期間の目安
- ホルモン療法:5〜10年
- 抗がん剤:3〜6か月
- 分子標的薬:数か月〜2年程度
- 放射線治療:数週間、平日ほぼ毎日
※治療内容や期間は人によって異なります。詳しくは主治医に確認しましょう。
フェーズ5:治療後の通院(見守り期間)
治療が終わったあとも、しばらくは定期通院が続きます。
目的は、
- 局所再発の確認
- 反対側の乳がんのチェック
- 治療後の体調確認
です。
一般的には、手術後しばらくは半年〜1年に1回程度の通院になることが多いです。
行われる検査としては、
- マンモグラフィ
- 乳房超音波検査
- 必要に応じた血液検査
などがあります。
一方で、症状がない段階で遠隔転移を探すためのCTなどを定期的に行うことは、一般的には推奨されない考え方が主流です。
だからこそ、体の変化に気づいたら、主治医に伝えることがとても大切です。
気をつけたい症状の例
- 骨転移:腰、背中、あばら骨の痛み
- 肺・胸膜転移:長引く咳、息苦しさ、胸の痛み
- 肝転移:黄疸、お腹の張り
- 脳転移:頭痛、吐き気、ふらつき、ろれつの回りにくさ など
フェーズ6:乳がん治療卒業後
長い見守り期間を終え、再発なく過ごせた方は、ひとつの大きな節目を迎えます。
本当にお疲れさまでした。
ただし、乳がんの再発リスクが完全にゼロになるわけではありません。
そのため、治療卒業後も乳がん検診は続けていくことが勧められます。
そのうえで、乳がんと距離を置いた生活を、ぜひ楽しんでほしいと思います。
まとめ|乳がん治療は「全体の地図」を持つと少し楽になる
乳がん治療は、人によって順番も内容も違います。
でも、多くの方が
- 診断される
- 詳しい検査を受ける
- 手術または術前治療を受ける
- 術後治療を受ける
- 定期通院で見守る
- 卒業する
という流れをたどります。
いま不安の中にいる方も、
まずは「自分はいまどのフェーズにいるのか」を知るだけで、少し気持ちが整理されるかもしれません。
乳がん治療は長い道のりになることもあります。
でも、ひとつずつ進んでいけば大丈夫です。

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