手術の後遺症

乳がんの手術には、いくつか手術のあとに気を付けなければならない後遺症があります。

人によっては「後遺症なんてなかったよ」という方もいれば、「後遺症が辛くて趣味もできないししんどい……」という方もおり、症状の重さに幅があることが乳がん手術の後遺症の特徴です。

ものによっては長期間つき合うことになるため、この記事ではひとつひとつ解説していきます。

① リンパ浮腫

乳がん手術の後遺症としては最もやっかいな後遺症のひとつです。特にわきのリンパ節郭清をした方(リンパ節転移があって、わきのリンパ節をたくさんとった方)に起こりやすい後遺症。

  • 腕や手にむくみが出る
  • 重く感じる、動かしにくい
  • 進行すると皮膚が硬くなる
  • 一度発症すると完全には治りにくい

一度なってしまうと治すのがなかなか難しく、予防が大切です。リンパ浮腫については説明が長くなるので、別記事で詳しく解説しています。詳しくは No.2015 腋窩郭清とリンパ浮腫 を。

② 肩の動かしにくさ・拘縮

人間の体は、傷ついた部分や欠損した部分、炎症が起きた場所を治すとき、膠原線維(こうげんせんい)という糊(のり)のような物質で傷のまわりをべたべたくっつけて修復をおこないます。そのため、手術などで大きく傷をつけたり、広く皮膚をはがしたりすると、手術後その周辺がべたべたくっついてしまって動かしにくくなることがあります。これを「癒着(ゆちゃく)」と呼びます。

乳房の手術では、わきや肩のあたりまで広く開くため、手術後の癒着で腕や肩の可動域が狭くなることがあります。

  • 腕が上がりにくい
  • 背中に手を回しにくい
  • 服を着るのに苦労

→ 癒着は手術後早期から腕をよく動かすことで予防できます。糊が乾く前に可動域を確保しておくイメージです。ただし、ドレーン(管)が入っている時期などは動かしてよい範囲が決まっているので、病院で指導された範囲で行いましょう。癒着してからリハビリで可動域を広げることもできますが、少し大変になります。手術後・退院後のリハビリ(ストレッチ・腕の体操)はしっかりやりましょう。

③ しびれ・感覚の異常

手術では皮膚を大きく切開し、わきのあたりを広く開くため、細かい神経や、残すことが難しい神経は、一部が切れたりしてしまいます。そのため、

  • わきの内側のしびれ
  • 二の腕の感覚低下
  • 手術跡の周りの違和感

のような後遺症が出ることがあります。これらは時間とともに薄れていくことが多いですが、数年以上長引いてしまう方も一定数います。残念ながら完全には消えないこともあります。

④ 創部のひきつれ・違和感

手術の傷の周りが、硬くなったり、突っ張ったりする後遺症です。これも傷が治る過程であるていど仕方がないことですが、保湿や、手術後の傷のテープの貼り方などで軽減できることもあります。

  • ひきつれて感じる
  • 季節の変わり目に痛む
  • 体勢によって違和感

これらの症状が慢性的に続くことがあります。

⑤ 胸の変形・左右差

  • 部分切除:くぼみ・ひきつれ
  • 全摘:胸が平らになる(再建しない場合)

これは想像がつくかたも多いと思います。直近の精神的な負担で言えば最も大きい後遺症かもしれません。美容的な問題、ボディーイメージの問題、温泉やプールなどの社会的な問題もあり、ブラ選びやシリコンパッドの利用、人工乳房(貼り付けるタイプ)などの利用をされる方も多い領域です。

⑥ 再建したインプラントのトラブル

人工物再建をした方は、体内に人工物が入ることが問題となります。体内に入った人工物は時に炎症を起こしたり、免疫細胞に異物と判断されて被膜を作り、そこに炎症が起きて硬くなってしまったりします。細菌が何らかのきっかけでついてしまうと、感染症でインプラントを抜去せざるを得なくなることもあります。

そのため、

  • 被膜拘縮(インプラントが硬くなる)
  • 位置ずれ
  • インプラントの破損

などが起こることがあります。術後の傷を清潔に保つ、通常の手術よりは長期間激しい運動を控えるなど、注意が必要です。

なお、組織拡張器(エキスパンダー)で再建を始めた方は、シリコンインプラントへの入れ替え手術が必要になります。これはトラブルではなく、はじめから予定されている2回目の手術です。

後遺症との付き合い方

後遺症と上手に付き合うコツ

    • 退院直後からのリハビリ(決められた体操)
    • リンパ浮腫の予防習慣
    • 痛みやしびれは我慢せず主治医に相談
    • 必要に応じて鎮痛剤や理学療法
    • 心の負担も大事、つらいときはメンタルケア
    • 体験談で他の人の工夫を学ぶ

まとめ

※この記事は一般的な医学情報です。実際の治療方針は、病状、検査結果、体調、価値観によって異なります。必ず主治医と相談してください。

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