検査をしても「転移ではない」と言われたのに、なんだか体の調子がおかしい。だるさが抜けない、気持ちが悪い——その不調の正体が分からないのは、不安なものですよね。
ときに、がんそのものが、離れた場所に思いがけない症状を引き起こすことがあります。これを傍腫瘍症候群(ぼうしゅようしょうこうぐん)と呼びます。
頻度は決して高くなく、乳がんでは比較的まれですが、進行した乳がんで時々問題になります。あまり知られていない現象ですが、「こういうこともあるんだ」と頭の片隅に置いておくと、いざというときに落ち着いて対応できます。
傍腫瘍症候群とは
がん細胞そのものが転移したのではなく、がんから分泌される物質や、がんに対する体の免疫反応によって、
- 神経
- 内分泌
- 皮膚
- 血液
などに異常が出ることを言います。がん細胞が直接その場所に来ているわけではない、というのが、転移との大きな違いです。
乳がんでみられる主な症候
乳がんで知られている傍腫瘍症候群には、たとえば次のようなものがあります。聞き慣れない名前が並びますが、すべてを覚える必要はありません。
主な傍腫瘍症候群
- 抗利尿ホルモン不適合分泌(SIADH):低ナトリウム血症
- 高カルシウム血症(骨転移なしでも)
- 自己免疫性脳症(神経症状)
- 血栓症(トルソー症候群)
- 皮膚症状(皮膚筋炎、紅斑など)
- 貧血、白血球異常
それぞれ、出てくる症状も対応も異なります。代表的なものを、もう少しだけ見ていきましょう。
症状例
ここでは、代表的なものを3つ取り上げます。
低ナトリウム血症(SIADH)
血液中のナトリウムが下がりすぎてしまう状態です。次のような症状が出ます。
- 倦怠感、頭痛、吐き気
- 重症化すると意識障害
- 血液検査で発覚
高カルシウム血症
逆に、血液中のカルシウムが高くなりすぎる状態です。骨転移がなくても起こることがあります。
- 吐き気・食欲低下
- 多飲多尿
- だるさ・うつ状態
- 重症化で意識混濁
トルソー症候群(がん関連の血栓)
がんに関連して、血栓(血のかたまり)ができやすくなる状態です。
- 説明できない深部静脈血栓
- 脳梗塞
- 肺塞栓
- 抗凝固薬での治療
検査と治療
では、こうした症状にはどう対応していくのでしょうか。
まとめ
傍腫瘍症候群はまれな現象ですが、「がんのせいで思わぬ症状が出ることもある」と知っておくだけで、原因の分からない不調に振り回されずにすみます。気になる症状があれば、遠慮なく主治医に伝えてくださいね。最後に、ポイントをまとめます。
※この記事は一般的な医学情報です。実際の治療方針は、病状、検査結果、体調、価値観によって異なります。必ず主治医と相談してください。