あなたは何タイプ?乳がんの4つのサブタイプとその特徴

サブタイプを知らずして、乳がんを知ることはできません。

乳がんは、性格の違う複数のタイプの集まりです。一括りに「乳がん」と呼ばれてはいるけれど、効く薬も、進み方も、治療の組み立ても、タイプによってまったく違います。

このタイプ分けを「サブタイプ」と呼びます。

自分の乳がんがどのサブタイプなのかを知ることは、ステージを知ることと同じくらい——いえ、それ以上に大事です。なぜなら、治療の中身そのものを決める大黒柱だからです。

サブタイプはどう決まる?3つの検査値で分かれる

サブタイプは、手術や針生検で取った組織の病理検査(染色液で染めて、顕微鏡で調べること)で分かります。

具体的にチェックするのは、次の3つの「目印(マーカー)」です。

サブタイプを決める3つのマーカー

    • ER(エストロゲン受容体):女性ホルモンを「食べる口」
    • PgR(プロゲステロン受容体):ERが働いている証拠(PgRが高い=ホルモン療法がより効きやすい)
    • HER2:「もっと増えなさい!」という命令を受け取るアンテナ

これに加えて、増殖の速さを示す「Ki-67」も補助的に使われます。

これらの陽性/陰性の組み合わせ(2×2)で、大きく4つのタイプに分かれます。

タイプ① ホルモン陽性HER2陰性乳がん(Luminal type)

ER または PgR が「陽性」で、HER2が「陰性」のタイプ——つまり、女性ホルモンに反応して育っているけれど、アンテナ(HER2)は持っていない乳がんです。日本人の乳がんでもっとも多く、全体の約70%を占めます。

ホルモン陽性タイプの細胞。金平糖(エストロゲン)を口から取り込んでいる

ホルモン陽性タイプの特徴

    • 女性ホルモン(エストロゲン)を「食べて」育つ
    • 比較的ゆっくり増える
    • 予後が良いタイプが多い(特にLuminal A型)
    • ホルモン療法(5〜10年の内服)が治療の柱になる ── 栄養源のホルモンを断つ作戦
    • 再発リスクは低めだが、長期間(10年以上)にわたって続くことがある

タイプ② HER2陽性ホルモン陰性乳がん(HER2 type)

HER2 が「陽性」のタイプ——つまり、「増えなさい!」という命令を受け取るアンテナをたくさん持っている乳がんです。ホルモンはエサにしません。乳がん全体の約15〜20%を占めます。

HER2陽性タイプの細胞。表面からアンテナがたくさん出ている

HER2陽性タイプの特徴

    • アンテナが多いぶん、増殖が速い
    • 昔は予後が悪かったが、抗HER2薬の登場で激変した
    • 抗HER2療法(トラスツズマブ(ハーセプチン)など)が劇的に効く ── アンテナを狙い撃ちする薬
    • 多くの場合、抗がん剤と組み合わせて治療する
    • 再発リスクは比較的早い時期(2〜5年)に集中する

タイプ③ トリプルネガティブ乳がん(TNBC)

ER も PgR も HER2 も、すべて「陰性」のタイプです。乳がん全体の約10〜15%を占めます。

トリプルネガティブタイプの細胞。周りに金平糖(エストロゲン)があるのに取り込まず、アンテナも持っていない

トリプルネガティブタイプの特徴

    • 増殖が速い傾向にある
    • ホルモン療法も抗HER2療法も効かない
    • 治療の中心は抗がん剤
    • 最近は免疫療法(PD-L1 陽性の場合)も加わる
    • 若い世代に多い、BRCA変異との関連も強い
    • 再発リスクは早い時期(2〜3年)に集中
    • 5年以上経つと、再発リスクは他のタイプより低くなる

「効く薬が少ない」と言われがちなトリプルネガティブですが、実はここ数年で治療の選択肢が一気に増えています。

PD-L1 という目印に着目した免疫療法、PARP阻害薬、抗体薬物複合体(抗体に抗がん剤を結びつけた新しいタイプの薬。サシツズマブ ゴビテカン(トロデルビ)など)——以前なら考えられなかった選択肢が次々と承認されています。

ブレきゃん!

「トリプルネガティブ=怖い」というイメージは、もう古い情報です。新しい薬がどんどん使えるようになっているので、最新情報をきちんと得ることが大切です。

タイプ④ ホルモン陽性HER2陽性乳がん(Luminal HER2 type)

タイプ①と②の性質を併せ持つタイプです。治療はホルモン療法も抗HER2療法も適応になるため、治療の組み立てがやや複雑になります。

4つのサブタイプにまとめると

ER/PgRとHER2の組み合わせで、もう少し細かく見るとこうなります。

受容体 \ HER2HER2 陰性HER2 陽性
ER/PgR 陽性Luminal A / B
約 60%
Luminal HER2
約 10%
ER/PgR 陰性トリプルネガティブ
約 15%
HER2 タイプ
約 5%

ざっくりこの4ブロックを覚えておくと、診察での話がグッと分かりやすくなります。

サブタイプごとの治療法の違い

それぞれのサブタイプで、治療の主役になる薬が違います。

サブタイプごとに、効く治療法(ホルモン療法・抗HER2療法・抗がん剤・免疫療法)を一覧で比較した図

主な治療の主役

    • ホルモン陽性HER2陰性:ホルモン療法 + 必要に応じてCDK4/6阻害薬・抗がん剤
    • ホルモン陽性HER2陽性:抗HER2療法 + ホルモン療法 + 抗がん剤
    • ホルモン陰性HER2陽性:抗HER2療法 + 抗がん剤
    • トリプルネガティブ:抗がん剤 + 免疫療法(PD-L1 陽性の場合)

なので、「同じ乳がんなのに、なんで隣の人と治療が違うの?」ということが起きるわけです。

自分のサブタイプを確認する方法

病理レポート(病理結果)を見れば、必ず書いてあります。

病理レポートで注目する項目

    • ER(エストロゲン受容体):陽性 / 陰性、または%やAllred score(0〜8点で評価し、3点以上を陽性とすることが多い)
    • PgR(プロゲステロン受容体):陽性 / 陰性、または%やAllred score
    • HER2:0、1+、2+、3+ で表記。3+は陽性、2+はFISH追加検査(詳しくは1203
    • Ki-67:%で表記。増殖の速さの目安

がんと告知されたら、ぜひ主治医に「私のサブタイプは何ですか?」と聞いてみてください。

ブレきゃん!

サブタイプを知ることは、自分の乳がんと向き合う第一歩。病理結果を見て分からないことがあったら、遠慮せずに聞いてくださいね。

※この記事は一般的な医学情報です。実際の治療方針は、病状、検査結果、体調、価値観によって異なります。必ず主治医と相談してください。

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