乳がんのステージ

「私はステージⅡって言われたんですけど……」

診察室でこう話してくれる方は、ほぼみなさん不安そうな表情です。「ステージ」という言葉は、どこか「重さの宣告」のように響くんですよね。

でも、ステージは「あなたの乳がんがいま、体のどこまで広がっているか」を表すだけの、地図のようなものです。

地図がはっきりすれば、これからどこに向かうか(治療方針)が決められます。

この記事では、ステージ0からⅣまでをやさしく整理します。

ステージは3つの要素で決まる(TNM分類)

ステージは、3つの要素を組み合わせて決まります。

ステージを決める3つの軸(TNM)

    • T(Tumor):原発巣の大きさ・広がり
    • N(Node):リンパ節への転移の有無・範囲
    • M(Metastasis):遠くの臓器への転移の有無

それぞれにT0〜T4、N0〜N3、M0〜M1という細かい区分があり、それを組み合わせてステージ0〜Ⅳが決まります。

ややこしく聞こえますが、ざっくり言うとこうです。

🖼 イラスト②
ステージ0〜Ⅳを段階的に表す図。乳房と全身のシルエットで、それぞれ広がり具合をビジュアル化

ステージ0(非浸潤癌)

非浸潤癌のことです。ミルクの通り道の中にがんがとどまっていて、まだ管の外には出ていない状態。

ステージ0の特徴

    • ミルクの通り道の中だけにあるがん
    • リンパ節転移なし、遠隔転移なし
    • 5年生存率はほぼ100%
    • 治療:手術+必要に応じて放射線治療・ホルモン療法
    • 抗がん剤は基本的に不要

詳しくは No.1003 浸潤癌と非浸潤癌 をご覧ください。

ステージⅠ

しこりが2cm以下で、リンパ節転移も遠隔転移もない、いわゆる「早期乳がん」です。

ステージⅠの特徴

    • しこり:2cm以下
    • リンパ節転移:なし
    • 遠隔転移:なし
    • 5年生存率:約99%
    • 治療:手術+放射線治療(部分切除の場合)+サブタイプに応じた全身治療

ステージⅡ

ステージⅡは、ⅡAとⅡBに分かれます。

ステージⅡの特徴

    • ⅡA:しこり2cm以下+脇のリンパ節に少し転移、または2〜5cmで転移なし
    • ⅡB:しこり2〜5cm+脇のリンパ節に少し転移、または5cm超で転移なし
    • 遠隔転移:なし
    • 5年生存率:約95%
    • 治療:手術+放射線+全身治療(抗がん剤・ホルモン療法・抗HER2療法を組み合わせ)

ステージⅡは、日本人の乳がんでもっとも多く診断されるステージのひとつです。

ステージⅢ

しこりが大きい、リンパ節転移が多い、または皮膚や胸壁に直接広がっているケースです。ⅢA・ⅢB・ⅢCに細かく分かれます。

ステージⅢの特徴

    • ⅢA:脇のリンパ節転移が多い、または鎖骨下リンパ節に転移
    • ⅢB:皮膚や胸壁にがんが直接広がっている、または炎症性乳がん
    • ⅢC:鎖骨上のリンパ節に転移
    • 遠隔転移:なし
    • 5年生存率:約80%
    • 治療:基本的に術前抗がん剤からスタート→手術→放射線→全身治療

ステージⅢは「局所進行乳がん」と呼ばれます。手術の前に抗がん剤を行って、しこりを小さくしてから手術するアプローチが標準的です。

ステージⅣ(遠隔転移あり)

骨・肺・肝臓・脳など、乳房から離れた臓器に転移がある状態です。

ステージⅣの特徴

    • 遠隔転移:あり(骨・肺・肝臓・脳など)
    • 5年生存率:約40%(サブタイプによって大きく異なる)
    • 治療:完治を目指すのではなく、長く付き合うことを目指す
    • 抗がん剤・ホルモン療法・抗HER2療法・分子標的薬・免疫療法など、状況に応じて選ぶ
🖼 イラスト④
ステージⅣで長く生きる人を象徴する図。日々の暮らしのなかで治療を続けながら笑顔で生活している姿

5年生存率の数字をどう読むか

ステージごとの5年生存率はよく出てくる数字ですが、これを正しく読むには注意が必要です。

5年生存率を読むときの注意

    • これは過去の患者さんのデータ=あなたの未来そのものではない
    • 治療は年々進歩しているので、最新の成績はもっと良くなっている
    • サブタイプによって数字は大きく変わる
    • 同じステージでも、ホルモン陽性とトリプルネガティブでは違う
    • 個別のリスクは主治医に確認するのが確実
ブレきゃん!

数字は「全体の傾向」を見るためのもの。あなた自身の予後は、サブタイプ・年齢・体力・治療への反応など、いろんな要素で変わります。

ネットで見た数字に過剰に振り回されないでくださいね。

ステージは「変わる」こともある

ステージは、最初の検査時点での「臨床ステージ(cStage)」と、手術後の病理結果を踏まえた「病理ステージ(pStage)」が、別々につけられます。

たとえば、最初は「ステージⅡと思っていた」けど、手術してみたらリンパ節転移が想定より少なくて「ステージⅠでした」となることもあります(その逆もあります)。

なので、最初の数字に一喜一憂しすぎないことも大事です。

ステージとサブタイプ、どっちが大事?

「ステージ」と「サブタイプ」、両方ともよく聞く言葉ですが、実は両方とも同じくらい大事です。

🖼 イラスト⑤
ステージ(広がり)とサブタイプ(顔つき)が縦軸・横軸になった2軸の図。両方が交差した点に治療方針が立つ

ざっくり言うと、こんな分担です。

ステージとサブタイプの役割

    • ステージ:いまどこまで広がっているか(広がりの軸)
    • サブタイプ:どんな性格のがんか(性格の軸)
    • ステージ → 治療の規模・順番・予後を決める
    • サブタイプ → 効く薬・治療の中身を決める
    • 両方を合わせて、あなただけの治療計画ができる
ブレきゃん!

「ステージⅡです」と聞いたら、次は「サブタイプは?」と聞いてみてください。両方が分かると、治療の見通しがぐっと立てやすくなります。

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