浸潤癌と非浸潤癌

「浸潤癌(しんじゅんがん)」「非浸潤癌(ひしんじゅんがん)」——病理結果や説明で、最初に耳にする言葉のひとつです。

なんだか難しそうな響きですが、ここを理解すると、自分の乳がんが「将来のリスクがどれくらいあるのか」「どんな治療を考えるか」が一気に分かるようになります。

この記事では、専門用語を使わずに、この2つの違いをやさしく解説していきます。

🖼 イラスト①
先生がノートに乳管の絵を描きながらかんじゃさんに説明しているシーン

一言でいうと「ミルクの通り道の中にとどまっているか、外に出たか」

乳がんは、もともとミルクの通り道である「乳管(にゅうかん)」の中で生まれます。

そして、生まれたばかりの乳がん細胞は、最初はその管の中にとどまっています。これが「非浸潤癌」です。

時間が経つと、一部のがん細胞は管の壁を破って、外の世界に飛び出してきます。これが「浸潤癌」です。

🖼 イラスト②
乳管の断面図。左側は管の中だけにがん細胞がある(非浸潤)、右側は管の壁を破って外に広がっている(浸潤)の対比図

なぜこの違いが大事なのか

この違いは、ただの分類ではありません。なぜ重要かというと、転移するかどうかに直結するからです。

がんが転移するためには、まず血管やリンパ管に入り込む必要があります。

ところが、血管やリンパ管はすべて、ミルクの通り道(乳管)の「外側」にあります。

つまり、がん細胞がミルクの通り道の中にとどまっている限り(=非浸潤の状態)、転移する経路が物理的にないのです。

非浸潤癌(ステージ0)の特徴

非浸潤癌について、もう少し詳しく整理します。

非浸潤癌のポイント

    • ミルクの通り道の中だけにとどまっている早期のがん
    • リンパ節転移や遠隔転移は基本的にしない
    • 適切に治療すれば、ほぼ100%治る
    • 「ステージ0」と分類される
    • マンモグラフィで「石灰化」として見つかることが多い
    • しこりとして触れないことが多い

検診のマンモグラフィで、点々とした石灰化(カルシウムの沈着)が見つかって、組織検査で非浸潤癌と分かる、というパターンが代表的です。

しこりとして自分で気づくことは少なく、検診のおかげで見つかる「ご褒美のような」がんとも言われます。

ブレきゃん!

非浸潤癌で見つかった方は、本当にラッキー。早期発見の検診の力が、しっかり働いた結果なんです。

浸潤癌の特徴

一方、浸潤癌は乳管の壁を破って外に出てしまった状態です。

浸潤癌のポイント

    • ミルクの通り道の外に広がっている
    • 血管・リンパ管に入り込む可能性がある
    • 転移するリスクがある(ただし、たくさんの「壁」を乗り越える必要がある)
    • ステージⅠ〜Ⅳに分類される
    • しこりとして触れることが多い
    • 治療は乳房の手術+必要に応じて全身治療を組み合わせる

浸潤癌だからといって、必ず転移するわけではありません。

ただ、転移する可能性がゼロではないので、見えないところに散らばっているかもしれないがん細胞をやっつけるための「全身治療(抗がん剤・ホルモン療法・分子標的薬など)」を、必要に応じて組み合わせます。

「混在」というケースもある

実際の臨床では、浸潤と非浸潤の両方が混ざっている乳がんもよくあります。

たとえば、しこりの中央は浸潤癌で、その周りに非浸潤癌が広がっている、というイメージです。

病理レポートを見たときに「IDC + DCIS」と書かれていたら、「浸潤の部分と非浸潤の部分が両方ありますよ」という意味です。

このとき大事なのは、浸潤の部分があれば「浸潤癌」として治療方針を考える、ということです。

非浸潤の部分がたくさんあっても、ほんの少しでも浸潤があれば、それは浸潤癌としての対応になります。

治療方針はどう変わるか

浸潤か非浸潤かによって、治療の組み立て方は変わります。

ただし、これは「典型的にはこうなる」という一般論で、最終的にはサブタイプ・ステージ・年齢・ご本人の希望などをすべて踏まえて、主治医と一緒に決めていくものです。

🖼 イラスト⑤
浸潤癌と非浸潤癌の治療の組み立てを並べた比較図。手術・薬物療法・放射線治療の有無が一目でわかる
非浸潤癌浸潤癌
手術する(部分切除 or 全摘)する(部分切除 or 全摘)
放射線治療部分切除なら基本する部分切除なら基本する
ホルモン療法ホルモン陽性なら検討ホルモン陽性なら基本する
抗がん剤基本不要必要に応じて
抗HER2療法基本不要HER2陽性なら基本する

非浸潤癌では「全身治療(抗がん剤や分子標的薬)」が基本不要なのが、最大のメリットです。

病理結果の見方

「浸潤性乳管癌」「DCISあり」など、病理レポートには細かく書かれています。

特に注目すべきは次の3つです。

病理結果でチェックしたい3つの言葉

    • 浸潤の有無:浸潤性 / 非浸潤性
    • 組織型:乳管癌 / 小葉癌 / 特殊型 など
    • サブタイプ:ER・PgR・HER2・Ki-67 の結果

これらの組み合わせで、あなたの乳がんの「顔」がはっきりします。

ブレきゃん!

病理レポートをもらったら、ぜひ主治医に「浸潤癌ですか、非浸潤癌ですか」と聞いてみてください。一番大事な軸なので、ちゃんと答えてくれるはずです。

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