ASCO2026特集、第2弾。スウェーデンの Jana de Boniface 先生が発表した SENOMAC(セノマック)試験です。
長年の課題だった 腋窩郭清(えきかかくせい)——わきの下のリンパ節をたくさん取る手術——を、省略できる人が増えそう、という研究。乳腺外科医にとっては、ちょっとした「事件」です。さっそく見ていきましょう。
そもそも「腋窩郭清」が必要な人って?
腋窩郭清をするかどうかは、全摘か部分切除か、浸潤か非浸潤かで扱いが変わります。
代表的な根拠が ACOSOG Z0011試験(初回報告2011年、10年追跡が2017年)。
これまでの整理
- 部分切除+全乳房への放射線で、転移が1〜2個 → 腋窩郭清の省略OK(これが Z0011 試験の結果)
- 全摘+転移あり → 従来は郭清(または脇への放射線)が中心。日本のガイドラインでも1〜2個なら省略は「弱く推奨」=検討はできるが、強い証拠がなく“標準”とまでは言い難い状況でした
ここが今回変わるかも! - 非浸潤(DCIS)+部分切除 → センチネルリンパ節生検も省略できることが多い(Z0011とは別の根拠)
問題は、Z0011には全摘の人がほとんど含まれていなかったこと。「部分切除で省けるなら、全摘でも省けるのでは?」と皆が思いつつ、確たる証拠がありませんでした。
(わきの手術=センチネルリンパ節生検と腋窩郭清のちがいは、こちらで詳しく解説しています)
SENOMAC試験で、何がわかったの?
SENOMACは、全摘・部分切除に関わらず、センチネルリンパ節生検で1〜2個の転移(2mm以上のしっかりした転移)があった人を対象にした、大規模な試験です(5か国・2766人)。
SENOMACの分け方
- 腋窩郭清を行うグループ
- 腋窩郭清を省略するグループ
この2つに分けて、生存期間に差が出ないか(=省略しても劣らないか)を検証しました。
一言でいうと——
「全摘だろうが部分切除だろうが、転移が1〜2個なら腋窩郭清を省略しても生存は変わらず、しかも腕は楽になる」
ということでした。
乳腺外科医からすると、これは新しい時代の幕開けなんだ。腋窩郭清を省略できる人が、これから一気に増える可能性があるから。早く現場でも、自信をもって省略できるようになってほしいな。
ただし、外せない「大前提」
ここが一番大事なので、太字で。
そのほかの注意点
ブレきゃんからのメッセージ
乳がんの手術も、「徹底的にとりきる」から「必要十分に」へ——引き算の時代に入っています。
ただ、“省ける”の裏には、放射線や薬という別の対策があること、そしてちゃんとした根拠が要ること。だからこそ、主治医と「なぜ省けるのか/自分は当てはまるのか」を一緒に確認することが、何より大切です。
新しい医療が現実に届くには、少し時間がかかります。みなさんは今できることに集中して、これからの発展を一緒に願いましょう😌
※この記事は、学会(ASCO2026)で発表された段階のデータをもとにしています(論文化前)。対象や数値、ガイドラインの推奨度は今後変わる可能性があります。
※この記事は一般的な医学情報です。実際の治療方針は、病状・検査結果・体調・価値観によって異なります。必ず主治医と相談してください。