ASCO2026特集、第5弾。今回紹介するのは、パリの Francois Clement Bidard 先生が発表した SERENA-6(セレーナ・シックス)試験の追加報告です。
昨年のASCOでも大きな話題になったこの試験。新世代の飲み薬「カミゼストラント」が、ホルモン陽性HER2陰性の転移・再発乳がんのなかでも、“ある遺伝子変異”が出たがん細胞にとても長く効く——と、私たち乳腺外科医からも大注目でした。
そして今回の追加報告では、さらにうれしいことが分かったんです。さっそく見ていきましょう。
主役は新世代の飲み薬「カミゼストラント」
ホルモン陽性乳がんは、エストロゲン(女性ホルモン)を”食べて”増える——これはこのサイトの記事を読まれている方や、私のXアカウントをフォローしている方なら、もうご存じかと思います。
その「食べる口」がエストロゲン受容体(ER)です。
カミゼストラントは、この食べる口(ER)そのものを壊してしまう、新世代の飲み薬(経口SERD)。エストロゲンを断つだけでなく、受け取る口ごと無くしてしまう、という発想の薬です。
カギになる「ESR1変異」
今回の主役は、ESR1(イーエスアールワン)変異という遺伝子の変化です。
SERENA-6がすごいのは「先回り」できること
この試験のいちばんの新しさは、まだ画像でがんが悪化する前に、血液検査の結果で薬を切り替えるところにあります。
※普通は、再発・転移乳がんの治療では、画像検査でがんが悪化していることを確認してからお薬を変更します。
- ホルモン療法+CDK4/6阻害薬で治療中の方を、定期的に血液検査(ctDNAという項目)でチェック
- ESR1変異が出てきた瞬間に、アロマターゼ阻害薬をカミゼストラントに切り替え(CDK4/6阻害薬はそのまま継続)
- 画像で悪化してから動くのではなく、“変異が出た直後=先回り”でお薬を変更(スイッチ)
つまり、組織をとる検査(生検)や画像検査でまだ悪化をしていなくても、血液の合図で一歩先に手を打てる、という戦略です。
今回の追加報告でわかったこと
実は、昨年の発表では「先回りでカミゼストラントに切り替えると、がんを抑える期間が長い」とわかっていました。
今回の追加報告では、さらにその先——カミゼストラントが効かなくなって”次の治療”に移ったあと、その治療が効かなくなるまでを見ても、先回りで切り替えた人の方が長くがんを抑えられていました。
入口(ER)を壊しつつ、CDK4/6で出口も塞いだままキープできるのがこの戦略の強み。しかも血液の合図で先回りできる。“監視のしかた”そのものが新しい段階に来た、と感じる研究だよ。
ただし、注意点
ブレきゃんからのメッセージ
経口SERDという新しい飲み薬が日本にも入りはじめ、ESR1変異という”効きにくくなるサイン”を血液で捉える時代が近づいています。
「効かなくなってから動く」から「サインを見て先回りする」へ。治療の考え方そのものが、少しずつ前に進んでいますね😊
※この記事は、学会(ASCO2026)で発表された段階のデータをもとにしています。対象や数値は今後変わる可能性があります。
※この記事は一般的な医学情報です。実際の治療方針は、病状・検査結果・体調・価値観によって異なります。必ず主治医と相談してください。