日本人の70%。ホルモン陽性乳がんってどんなタイプ?

Abstract watercolor: round cell-like shapes in soft pink, ea

「あなたはホルモン陽性タイプですよ」——そう説明された方、実はとても多いんです。

なにしろ、日本人の乳がんのおよそ7割が、このホルモン陽性乳がん。いちばんの“多数派”です。

ひとことで言うと、女性ホルモン(エストロゲン)を「食べる口」でキャッチし、それを栄養にして育つ乳がん(正式には「ホルモン受容体陽性乳がん」)。

——こう聞くと身構えてしまうかもしれませんが、実はこのタイプ、よく効く治療があって、比較的ゆっくり育つ、いわば“長くつき合っていきやすい”タイプでもあります。まずは、どんな乳がんなのかを、いっしょに見ていきましょう。

女性ホルモンは本来、体にとって大切なもの

最初に大事なことを。女性ホルモン(エストロゲン)は、本来とても大切な物質です。

  • 月経・妊娠・出産
  • 骨の健康
  • 肌の状態
  • 血管・心臓の健康
  • 認知機能

など、女性の体をさまざまな面で支えています。乳房も女性ホルモンの影響を受ける臓器で、思春期に胸が大きくなるのもこのホルモンの働きです。

ただ、ホルモン陽性乳がんはこのエストロゲンを利用して大きくなる性質を持ってしまいました。それが治療の標的にもなります。

がん細胞についた「食べる口」=ER

ホルモン陽性乳がんの細胞がもつ「女性ホルモンを食べる口」の正式名称は ER(エストロゲン受容体:Estrogen Receptor) です。

血液の中を流れてきたエストロゲンがERにくっつくと、がん細胞は「栄養が来た、増えなさい」という信号を受け取ります。

つまりER陽性の乳がんは、「女性ホルモンを栄養に育つ乳がん」とイメージできます。

もう一つの受容体「PgR」は影響を受けている印

ホルモン陽性乳がんでは、もう一つの受容体が登場します。

PgR(プロゲステロン受容体:Progesterone Receptor) です。

PgRは ER のようにホルモンを食べる口ではなく、ERが刺激されたあとに細胞内で作られる受容体です。

エストロゲンを食べる → ERが刺激される → PgRが作られる

つまりPgRは「この乳がんは女性ホルモンの影響をしっかり受けていますよ」という印のような役割を持ちます。

そのため検査では ER と PgR を両方調べて、どちらかが陽性ならホルモン陽性乳がんと分類します。詳しくは No.1101 ERとPgR で。

ホルモン療法は「がんの兵糧攻め」

ホルモン陽性乳がんの最大の特徴は、「女性ホルモンを断つと弱る」こと。これを利用した治療が ホルモン療法(内分泌療法) です。

具体的な薬剤は閉経状態によって変わります:

  • 閉経前:タモキシフェン(ノルバデックス)、必要に応じて LH-RH アゴニスト
  • 閉経後:アロマターゼ阻害薬(レトロゾール(フェマーラ)・アナストロゾール(アリミデックス)・エキセメスタン(アロマシン))

詳しくは No.2100 ホルモン療法とは を。

「ゆっくり育つ」傾向がある

ホルモン陽性乳がんは、他のサブタイプと比べると 比較的ゆっくり大きくなる ことが多いタイプです。

そのため、治療も短期決戦ではなく 長く再発を防いでいく治療 になります。ホルモン療法は通常 5〜10年 続けます。

「5〜10年は長い……」と感じるかもしれませんが、ホルモン陽性乳がんは 10年以上経ってから再発することもあるタイプ。長く続けることが再発予防にとても大切です。

ブレきゃん!

毎日1錠の内服でも、10年続ければ大きな積み重ねになる。最初はしんどくても、習慣になると意外と気にならなくなるよ。

抗がん剤を加えるかどうかの判断

ホルモン陽性乳がんの中でも、リスクが高い場合は抗がん剤を上乗せすることがあります。判断材料:

抗がん剤を考えるサイン

    • リンパ節転移が多い
    • 大きなしこり(5cm超)
    • グレード3(高異型度)
    • Ki-67 が高い(30%以上は強く検討)
    • PgR陰性または弱陽性
    • 若年発症(45歳以下)
    • オンコタイプDX で高リスクスコア

これらが組み合わさるほど、抗がん剤の意義が増します。詳しくは No.2102 ホルモン陽性でも抗がん剤が勧められる人 を。

予後は比較的良いタイプが多い

ホルモン陽性乳がんは、乳がんの中でも 比較的予後が良いことが多い タイプです。

理由:

  • ホルモン療法という有効な治療がある
  • 他のサブタイプと比べて比較的ゆっくり育つ
  • 条件によっては抗がん剤を使わずに治療できることもある

もちろん、すべての方に当てはまるわけではなく、リンパ節転移や腫瘍径などで個別差はあります。それでも全体として、多くの方が再発なく長く過ごせるタイプです。

ブレきゃん!

「もっとも多いタイプ」=「先輩患者さんが大勢いる」ということ。
治療を続けながら穏やかに暮らしている方は本当にたくさんいるよ。

内部分類:Luminal AとB(参考)

ホルモン陽性タイプは、Ki-67 の値などで「Luminal A」「Luminal B」と呼び分けられることがあります。

LuminalタイプのABC

    • Luminal A:Ki-67低め、ゆっくり、抗がん剤の必要性低
    • Luminal B:Ki-67高め、やや速い、抗がん剤を検討
    • Luminal HER2:HER2も陽性、抗HER2療法も追加

まとめ

※この記事は一般的な医学情報です。実際の治療方針は、病状、検査結果、体調、価値観によって異なります。必ず主治医と相談してください。

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