「mTOR」という耳慣れない言葉が出てくると、むずかしく感じるかもしれませんよね。でも、ここを少し知っておくと、ホルモン療法が効きにくくなったあとの治療の選択肢が見えてきます。むずかしく考えなくて大丈夫です。
mTOR(エムトール)は、AKTパスウェイの下流にある、細胞の成長・増殖・代謝を統括するタンパク質です。いわば、細胞が「育つかどうか」を決める成長スイッチのような存在です。
栄養が十分にあるとき、mTORが「いまは成長するチャンス!」と判断して、細胞を増殖モードに切り替えます。スイッチが入ると、細胞は大きく育とうとするイメージです。
がん細胞ではmTORが暴走しがち
正常な細胞では、栄養が足りないとmTORは止まります。「いまは育つときではない」と、ちゃんとブレーキがかかるのですね。
ところががん細胞では、AKTパスウェイの異常などでmTORがずっとオンになってしまい、栄養が足りなくても増殖を続けようとします。スイッチが入りっぱなしで、ブレーキがきかなくなっているような状態です。ここがポイントです。
スイッチが入りっぱなしになるのは、あなたの体の使い方や、これまでの努力のせいではありません。長い時間の中で、たまたま細胞の設計図にキズが積み重なって起きること。どうか、ご自分を責めないでくださいね。
エベロリムスはmTORを止める薬
エベロリムス(商品名:アフィニトール)は、mTORの働きを止める薬です。入りっぱなしになったスイッチをそっと切って、暴走にブレーキをかけてあげるイメージですね。
知っておきたい副作用
新しい薬を始めるとき、いちばん気になるのは副作用のことですよね。エベロリムスにも知っておきたい副作用があるので、先に整理しておきましょう。
エベロリムスのおもな副作用
- 口内炎(この薬では特に多い)
- だるさ(倦怠感)
- 血糖値や、中性脂肪・コレステロールの上昇
- 間質性肺炎(頻度は高くないものの、注意したい)
このなかでも、いちばん多いのが口内炎です。ただ、これはあらかじめ手を打てる副作用でもあります。
デキサメタゾンというステロイドが入ったうがい薬で口の中をこまめにすすいでおくと、口内炎をかなり予防できることが分かっています。治療が始まったら、うがいを毎日の習慣にしておくと安心ですよ。
まとめ
仕組みの名前まで全部覚えられなくて大丈夫です。「ホルモン療法が効きにくくなったあとにも、スイッチを止める別の薬がある」——そんなイメージが残れば、主治医と話すときの足がかりになります。
※この記事は一般的な医学情報です。実際の治療方針は、病状、検査結果、体調、価値観によって異なります。必ず主治医と相談してください。