免疫療法の使いかたとタイミング

「免疫療法」と聞くと、なんだか特別な最先端の治療に聞こえて、身構えてしまう方もいるかもしれません。

免疫療法は、がん細胞が免疫にかけている「ブレーキ」を外して、自分の免疫の力でがんを攻撃してもらう治療です。トリプルネガティブ乳がんの治療で、いま大事な役割をになっています。

この記事では、免疫療法をトリプルネガティブ乳がんのどの場面で、どう使うのかを、ブレきゃん流に整理していきます。

まずは、しくみをおさらい

本来、私たちの体には免疫の仕組みがあって、不良品の細胞ができたら見つけて攻撃してくれます。

ところが、ずるいがん細胞は「PD-L1」という“にせの免許証”を掲げて、免疫細胞のセンサー(PD-1)に「私は仲間ですよ」と勘違いさせ、攻撃にブレーキをかけてしまいます。

免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)は、このやりとりの間に割り込んで免疫細胞のブレーキを外します。すると、免疫細胞は本来の仕事を再開して、がんを攻撃するようになってくれるんですね。

ブレきゃん!

「PD-1とPD-L1って結局なに?」という方は、こちらの記事 No.1018 PD-1とPD-L1 で詳しく解説していますので、のぞいてみてくださいね。

いつ使うのか——2つの場面

免疫療法は、トリプルネガティブ乳がんの治療で、大きく2つの場面で使われます。この2つは、対象になる方の条件がはっきり違うので、分けて見ていきましょう。

1. 手術の前後(周術期)

まだ遠くの臓器に転移のない、手術で取りきれるトリプルネガティブ乳がん(ステージ3以下)のうち、しこりがある程度の大きさだったり、リンパ節に転移があったりする方が対象です。

手術の前に抗がん剤と免疫療法を組み合わせて行い、手術のあとも免疫療法を続けます。

この使い方は、KEYNOTE-522試験1)という研究でたしかめられました。手術前の薬でがんが完全に消えるpCR(手術で取り出した組織にがんが残っていない状態)に至る割合が高まり、再発も減ることが示されています。

2. 転移・再発したとき

ほかの臓器に転移していたり、再発したりしたトリプルネガティブ乳がんでは、少し話が変わります。この場面では、PD-L1が陽性の方にかぎって免疫療法を使うことができます2)3)。

そのため、治療を始める前に、PD-L1の状況を病理検査で調べます。くわしくは No.1018 PD-1とPD-L1 の検査の項をご覧ください。

使う薬

乳がんの免疫療法では、いまおもに次の2つの薬が使われます。

乳がんで使う免疫チェックポイント阻害薬

    • ペムブロリズマブ(キイトルーダ)… 手術の前後、および転移・再発(PD-L1陽性)で使う
    • アテゾリズマブ(テセントリク)… 転移・再発(PD-L1陽性)で使う

どちらも抗がん剤と組み合わせて使うのが基本で、免疫療法だけを単独で使うことはありません。免疫療法が免疫にかかったブレーキを外し、抗がん剤ががん細胞そのものをたたく——という二本立てで攻めていくイメージです。

副作用——免疫が暴走することがある

免疫のブレーキを外す治療なので、はたらきが強くなった免疫が、誤って自分の正常な臓器を攻撃してしまうことがあります。これを免疫関連有害事象(irAE)と呼びます。

主な免疫関連副作用

    • 甲状腺機能異常
    • 副腎機能低下
    • 1型糖尿病
    • 大腸炎
    • 間質性肺炎
    • 皮膚障害
    • まれに心筋炎・神経障害

これらは「いつもと違う体調の変化」として現れます。「だるい」「動悸が続く」「下痢が止まらない」といった、ちょっとした症状でも主治医に伝えるのが大切です。

まとめ

参考文献

    • 1) Schmid P, et al. N Engl J Med. 2024; 391: 1981-1991.(KEYNOTE-522試験)
    • 2) Cortes J, et al. N Engl J Med. 2022; 387: 217-226.(KEYNOTE-355試験)
    • 3) Schmid P, et al. N Engl J Med. 2018; 379: 2108-2121.(IMpassion130試験)

※この記事は一般的な医学情報です。実際の治療方針は、病状、検査結果、体調、価値観によって異なります。必ず主治医と相談してください。

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