「抗がん剤って吐くんでしょ?」
これはよくあるイメージですが、実は薬によって吐き気の強さが大きく違います。催吐性リスクという4段階の分類があります。
催吐性リスクの4段階
NCCN(米国総合癌情報ネットワーク)と日本癌治療学会のガイドラインで、抗がん剤は催吐性によって4段階に分類されています。
| 略称 | 分類 | 吐く人の割合 |
|---|---|---|
| HEC | 高度催吐性(Highly Emetogenic) | 90%超 |
| MEC | 中等度催吐性(Moderately Emetogenic) | 30〜90% |
| LEC | 軽度催吐性(Low Emetogenic) | 10〜30% |
| Minimal | 最小催吐性(Minimal Emetogenic) | 10%未満 |
制吐剤(吐き気止め)の組み合わせは、このリスクに応じて決められます。
乳がんで使う薬の催吐性 一覧(NCCN 2024年版に準拠)
- AC療法
- EC療法
- FEC療法
- ddAC療法
- ddEC療法
- カルボプラチン(AUC 4以上)※1
- 高用量シクロホスファミド単独
- シスプラチン(乳がんでは稀)
- TC療法
- カルボプラチン(AUC 4未満)
- 標準用量ドキソルビシン単独
- 標準用量エピルビシン単独
- イリノテカン(乳がんでは稀)
- カドサイラ(T-DM1)※2
- エンハーツ(T-DXd)
- サシツズマブ・ゴビテカン ※3
- ダトロウェイ(Dato-DXd)※3
- ドセタキセル
- パクリタキセル
- nab-パクリタキセル
- ゲムシタビン
- エリブリン
- 5-FU
- カペシタビン
- TS-1
- エベロリムス(アフィニトール)
- オラパリブ
- タラゾパリブ
- アベマシクリブ
- カピバセルチブ
- タモキシフェン
- アロマターゼ阻害薬(レトロゾール・アナストロゾール・エキセメスタン)
- リュープリン・ゾラデックス
- フルベストラント
- イムルリオ
- トラスツズマブ単独
- ペルツズマブ単独
- フェスゴ
- パルボシクリブ
- ラパチニブ
- ベバシズマブ
- ペムブロリズマブ
- アテゾリズマブ
- ビノレルビン
※1 カルボプラチン(AUC≧4):NCCNは2017年からHECに分類していますが、日本癌治療学会(JSCO)の制吐薬適正使用ガイドラインでは伝統的にMEC扱いとされています。実臨床ではMECとして対応されることも多いため、主治医にご確認ください。
※2 カドサイラ(T-DM1):NCCNはMEC(中等度)に分類していますが、JSCOではLEC(軽度) に分類されています。日本での実臨床ではLECとして制吐対応がされることが多いです。
※3 新規ADC(サシツズマブ・ゴビテカン・Dato-DXd):比較的新しい薬で、NCCNは中等度(MEC)に分類しています。日本のJSCOガイドラインにはまだ記載がなく、今後の更新により分類が変わる可能性もあります。各薬剤の添付文書と最新情報もご確認ください。
併用時のルール:複数の薬を組み合わせる場合は、いちばん催吐性が高い薬のレベル に合わせて制吐剤を選びます。例えば「ドセタキセル+トラスツズマブ+ペルツズマブ」は軽度(ドセタキセル基準)になります。
「乳がんで使う抗がん剤=最強に吐く」というわけではなく、ホルモン療法や分子標的薬は最小レベル のものが多いのが実際です。
制吐剤でかなり予防できる
現在は、強力な制吐剤(吐き気止め)が複数あって、ほとんどの方が吐かずに治療を受けられる時代になっています。
詳しくは No.2023 制吐剤の種類 を。
まとめ
※この記事は一般的な医学情報です。実際の治療方針は、病状、検査結果、体調、価値観によって異なります。必ず主治医と相談してください。
参考:NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology — Antiemesis(2024年版)。一部、日本癌治療学会「制吐薬適正使用ガイドライン」と分類が異なる部分には注記を付けています。