乳房再建の方法

乳房を全摘したあと、希望すればふくらみを作り直す(乳房再建)ことができます。 再建を考えるときに知っておきたいのは、大きく分けて 「何で作るか」「いつ・何回に分けて作るか」 の2つです。

順に整理していきます。

何で作るか:人工物か、自分の体の一部か

① 人工物(インプラント)再建

シリコンで作られた人工乳房を、胸の皮膚と大胸筋の下あたりに入れる方法です。 やわらかいクッションを胸の中に入れるイメージ に近いです。

インプラント再建の特徴

    • 手術時間が比較的短く、入院期間も短め
    • 胸以外の場所に新しい傷ができない
    • 触り心地は、自然な脂肪より少し硬めにかんじることが多い
    • 10〜15年ほどで入れ替えが必要になることがある
    • ごくまれに「BIA-ALCL」というリンパ腫が報告されている(非常にまれですが、定期的なチェックは続けます)
    • 保険適用あり

② 自家組織(自分の体の一部)再建

お腹や背中など、自分の体の別の場所から、皮膚と脂肪(必要に応じて筋肉)を胸まで移動させて、ふくらみを作り直す方法です。 「余っているところから少し分けてもらって、足りないところに移す」 イメージです。

主な自家組織法

    • 広背筋皮弁:背中の皮膚と筋肉を、脇の下を通して胸に回す
    • DIEPフラップ:下腹部の皮膚と脂肪を、血管ごと胸に移植
    • TRAMフラップ:下腹部の皮膚・脂肪に加え、腹直筋の一部も使う
    • 大腿(太もも)や臀部の組織を使う方法もあり

自家組織再建の特徴

    • 触り心地が自然で、体温も自然に伝わる
    • 加齢にあわせて反対側と一緒に少しずつ変化していく
    • 入れ替えの必要がない
    • 採った場所(お腹や背中)に大きな傷ができる
    • 手術時間が長く、入院期間も長め
    • 血管をつなぐ繊細な手術になる施設も多い
    • 保険適用あり

いつ・何回に分けて作るか:4つの組み合わせ

再建のタイミングには 「いつ始めるか(一次/二次)」「何回の手術で仕上げるか(一期/二期)」 の2軸があります。

2つの軸

    • 一次再建:乳がんの手術と 同時 に再建を始める
    • 二次再建:乳がん治療が落ち着いてから、後日 あらためて再建する
    • 一期再建:1回の手術 で仕上げる
    • 二期再建:2回の手術 に分けて仕上げる

この2軸を組み合わせると、よく出てくる呼び方は次の4つになります。

4つの組み合わせ

    • 一次一期再建:全摘と同時に、最終形まで一度で仕上げる
    • 一次二期再建:全摘と同時にまず エキスパンダー(TE) を入れ、後日シリコンや自家組織に入れ替える(最も多いパターン)
    • 二次一期再建:治療が落ち着いてから、一度の手術で再建
    • 二次二期再建:治療が落ち着いてから、TE→入れ替えの2段階で再建

組織拡張期(TE)って何をしているの?

全摘のあと、胸の皮膚は しぼんだ風船のような状態 で残っています。 そこにいきなり大きなシリコンを入れようとしても、皮膚が足りずに突っ張ってしまいます。

そこで使うのが エキスパンダー(Tissue Expander:TE) という、ふくらませる前の風船のような器具です。

TEはどんなもの?

TEは シリコン製の袋 で、中に生理食塩水を少しずつ追加していくことでふくらんでいく仕組みです。 袋の一部に 金属製の小さな注水ポート(バルブ) がついていて、ここに体の外から針を刺して水を入れます。

どこに入れる?

TEは 大胸筋の裏側(大胸筋と肋骨の間) に入れるのが基本です。 皮膚のすぐ下ではなく、筋肉のさらに奥にしまうイメージで、こうすることで皮膚への負担が減り、輪郭も自然に近くなります。

最近は、患者さんの状態によって皮膚と大胸筋の間に入れる方法(プレペクトラル法)を選ぶ施設もあります。

どうやって水を入れる?

  • 月に1〜2回ほど、形成外科外来に通って注水します
  • 皮膚の上から 磁石でポートの位置を確認 し、専用の注射針を刺します(金属ポートなので針が奥まで届かず安全)
  • 1回あたり 50〜100mL程度 の生理食塩水を、ゆっくり注入
  • 注入中に張りや痛みが強く出ないか確認しながら進めます

注水のたびに、胸の皮膚がほんの少しずつ伸びていきます。 「風船を一気にふくらませず、少しずつ空気を足していく」 イメージです。皮膚は時間をかけてあげれば、想像以上にしなやかに伸びてくれます。

TEから本格的な再建までの期間

  • 注水を開始してから、目標のふくらみに達するまで およそ3〜6ヶ月
  • 目標まで届いたあと、皮膚をなじませるために さらに数ヶ月キープ することが多い
  • 入れ替え手術までは、TE挿入から だいたい半年〜1年程度 が目安

抗がん剤や放射線の治療を挟む場合は、その治療が終わって体調が落ち着いてから入れ替え手術を行います。そのため、入れ替えまでの期間はもう少し長くなることもあります。

どう選べばいい?

「何で作るか」「いつ・何回で仕上げるか」は、ご本人の 体型・生活・治療計画・希望 によって組み合わせが変わります。

相談するときの目安

    • なるべく早くふくらみを取り戻したい → 一次再建(同時)が候補
    • まずは治療を優先したい、ゆっくり考えたい → 二次再建も十分に選べる
    • 手術回数を減らしたい → 一期再建が候補(条件が合えば)
    • 放射線の予定がある → タイミング・方法は要相談
    • 自然な触り心地を重視 → 自家組織
    • 入院・手術時間を短くしたい → インプラント

形成外科医のいる施設・いない施設で選べる方法も変わってきます。 迷ったときは、形成外科外来で 「自分の場合はどの組み合わせができるか」 を聞いてみると、ぐっと整理されます。

「再建しない」という選択も尊重される

「再建はしない」「そのままの胸で生きていく」という選択も、もちろん尊重されます。 再建する/しないに正解はなく、ご自身の暮らしと気持ちに合う方を選んでいい部分です。

まとめ

※この記事は一般的な医学情報です。実際の治療方針は、病状、検査結果、体調、価値観によって異なります。必ず主治医・形成外科医と相談してください。

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