ダトポタマブ デルクステカン
だとぽたまぶでるくすてかん (ダトロウェイ)
がん細胞の表面のTROP2をめじるしにして、抗がん剤(デルクステカン)を細胞の中まで運びこむ薬だよ。
エンハーツ(トラスツズマブ デルクステカン)と同じ会社の同じ仕組みで、くっつく相手がHER2からTROP2に変わったもの、と考えると分かりやすいよ。
ホルモン陽性HER2陰性の転移・再発では抗がん剤のあとに使う薬。2026年9月からは、トリプルネガティブの転移・再発の最初の治療にも使えるようになったよ。口内炎と目の乾きが出やすいのがこの薬の特徴で、うがい薬と目薬で予防しながら使うんだ。
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抗TROP2抗体ダトポタマブに、トポイソメラーゼI阻害薬デルクステカンを結合した抗体薬物複合体(ADC)。日本では、化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳癌(2024年12月承認)と、ホルモン受容体陰性かつHER2陰性(トリプルネガティブ)の手術不能または再発乳癌の一次治療(2026年9月承認)が対象。1回6mg/kgを3週間に1回点滴する。TROPION-Breast01試験で、医師選択の抗がん剤にくらべて無増悪生存の改善が示された(全生存は差なし)。TROPION-Breast02試験(免疫チェックポイント阻害薬の対象とならない未治療のトリプルネガティブ)では全生存の改善も示された。口内炎・眼の副作用・間質性肺疾患に注意する。
基本情報
- 分類
- 抗TROP2 抗体薬物複合体(ADC)
- はたらき
- がん細胞の表面のTROP2に抗体でくっつき、抗がん剤(デルクステカン)を細胞の中に運びこむ
- のみ方・打ち方
- 点滴
- 使う場面
- ホルモン陽性・トリプルネガティブ 転移・再発
- 保険で使える条件
- 化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がん(アントラサイクリン系またはタキサン系の抗がん剤を使ったことがある人)。2026年9月からは、ホルモン受容体陰性かつHER2陰性(トリプルネガティブ)の手術不能または再発乳がんにも、最初の治療から使えます。臨床試験は、免疫チェックポイント阻害薬の対象にならない人で行われました。手術の前後の治療には使えません(添付文書)
よくある副作用
| 症状 | 対処法 |
|---|---|
| 口内炎 | 半数の人に出ます。治療をはじめる前から、ステロイド入りのうがい薬を1日4回使って予防します。点滴の最中に氷を口に含むのも予防になります。痛くて食べにくいときは連絡 |
| 吐き気 | 半数の人に出ますが、重いものはまれ。予防の吐き気止めを使ったうえで点滴します |
| 脱毛 | 3人に1人ほど。ウィッグや帽子は早めに準備 |
| 目の乾き・角膜の傷 | 5人に1人に目の乾きが出ます。防腐剤の入っていない目薬(人工涙液)で予防し、コンタクトレンズは避けます。治療の前と治療中に眼科で診てもらいます |
| だるさ | 4人に1人ほど。無理をせず休む。強くなってきたら主治医に伝える |
| 便秘 | 5人に1人ほど。水分と食物繊維をとり、続くときは便をやわらかくする薬を出してもらえます |
| 白血球(好中球)の減少・貧血 | 10人に1人ほどで、ふつうの抗がん剤より少なめです。熱が出たらすぐ連絡 |
病院に連絡する目安
すぐに連絡
- 息切れ・空咳・熱が出てきた(間質性肺疾患のサイン。100人に3人)
- 目が痛い・見えにくい・光がまぶしい(角膜の傷のサイン)
- 口内炎で水分がとれない
- 38℃以上の熱が出た。夜間や休日でも (発熱性好中球減少症)
- 点滴の最中に、息苦しい・じんましん・顔がはれた。その場で看護師に (インフュージョンリアクション)
その他の基準
- 口内炎が痛くて食事がとりにくい
- 目の乾きやゴロゴロする感じが続く
- 便秘が続く
- 眠れない、気分が落ち込む
迷ったら連絡してください。息切れや空咳は「かぜかな」で様子を見ず、まず連絡を。間質性肺疾患は早く見つけるほど軽くすみます。
エンハーツとの違い
トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ)とは、運ぶ抗がん剤(デルクステカン)も、くっつけ方も同じです。違うのは抗体がめじるしにする相手で、エンハーツはHER2、ダトロウェイはTROP2です。
だから使う場面が違います。エンハーツはHER2陽性やHER2低発現の乳がん、ダトロウェイはHER2の量に関係なく、ホルモン陽性HER2陰性やトリプルネガティブの乳がんに使います。
副作用にも違いがあります。どちらも間質性肺疾患に注意しますが、ダトロウェイでは口内炎と目の乾きが目立ち、白血球の減少はエンハーツより少なめです。
口内炎と目の副作用は「予防」が中心
口内炎は半数の人に出ますが、多くは軽いものです。治療をはじめる前からステロイド入りのうがい薬(デキサメタゾンの液)を1日4回、1〜2分ふくんで吐き出す、という予防が勧められています。点滴の最中に氷を口に含む方法も使われます。
目の副作用は「乾く」「ゴロゴロする」から始まり、角膜に傷がつくことがあります。防腐剤の入っていない人工涙液を1日数回さし、コンタクトレンズは避けます。治療の前と、治療中は定期的に眼科で診てもらいます。
どちらも、予防に力を入れておくと、快適に治療生活が続けられる可能性が高くなる副作用です。
生存期間では差が出なかった
TROPION-Breast01試験では、がんが大きくならずに過ごせる期間はのびましたが、生存期間そのものには差がありませんでした(中央値18.6ヶ月と18.3ヶ月)。
理由のひとつとして、抗がん剤の群の人がそのあとにエンハーツやトロデルビなど別の抗体薬物複合体を使った割合が高かったことが挙げられていますが、はっきりした答えは出ていません。
トリプルネガティブ乳がんの最初の治療として調べたTROPION-Breast02試験では、生存期間ものびています(中央値23.7ヶ月と18.7ヶ月)。この結果をもとに、米国とEUに続いて、日本でも2026年9月にトリプルネガティブの最初の治療として承認されました。対象は、免疫チェックポイント阻害薬の対象にならない人です。
臨床試験
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TROPION-Breast01
ホルモン療法のあと、抗がん剤を1〜2種類使ったホルモン陽性HER2陰性の転移・再発乳がん732人を、ダトポタマブ デルクステカンと医師が選んだ抗がん剤に分けた試験です。がんが大きくならずに過ごせた期間の中央値は6.9ヶ月と4.9ヶ月でした。重い副作用は抗がん剤より少なく、いちばん多かった副作用は吐き気と口内炎でした。
Bardia A, et al. J Clin Oncol. 2025;43:285. PubMed
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TROPION-Breast01(全生存)
同じ試験の続報です。生存期間の中央値は18.6ヶ月と18.3ヶ月で、差はありませんでした。
Pistilli B, et al. Ann Oncol. 2026;37(5). PubMed