TROP2
とろっぷつー(Trophoblast cell surface antigen 2)
がん細胞の表面にたくさんくっついている、めじるし用のたんぱくだよ。
HER2のような「がんを増やす命令を受け取るアンテナ」ではなくて、正常な細胞にはあまりなくて、がん細胞にたくさんあるただのしるし。だから、抗がん剤をくっつけた抗体でここをねらうと、がん細胞にだけ薬を届けやすいんだ。
乳がんではほとんどのタイプでたくさんこのめじるしが出ているから、HER2と違って「陽性か陰性か」の検査はしないでいいんだ。TROP2陽性乳がんとかTROP2陰性乳がんとかのサブタイプがないのはそのためなんだね。
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多くの上皮性のがんの細胞表面に多く発現する膜たんぱく。正常な組織にもわずかにあるが、乳がんではサブタイプを問わず大部分の腫瘍で高く発現する。乳がんの治療では、TROP2そのものの働きを止めるのではなく、抗TROP2抗体に抗がん剤を結合した抗体薬物複合体(サシツズマブ ゴビテカン、ダトポタマブ デルクステカン)の「めじるし」として使われる。HER2と違い、薬の適応を決めるためのTROP2の検査は行わない。
- 関係するひと
- 転移・再発の治療で、抗体薬物複合体(ADC)を検討する人
- 関係するタイプ
- トリプルネガティブ乳がんホルモン陽性・HER2陰性乳がん
- 調べる方法
- 調べない。薬を使うのにTROP2の検査は要らない
- ねらう薬
- サシツズマブ ゴビテカンダトポタマブ デルクステカン
TROP2をねらう2つの薬
| サシツズマブ ゴビテカン(トロデルビ) | ダトポタマブ デルクステカン(ダトロウェイ) | |
|---|---|---|
| 運ぶ抗がん剤 | SN-38(イリノテカンの活性体) | デルクステカン(エンハーツと同じ) |
| 日本で使える場面 | 化学療法歴のあるトリプルネガティブ、または化学療法歴のあるホルモン陽性HER2陰性の転移・再発 | 化学療法歴のあるホルモン陽性HER2陰性の転移・再発、またはトリプルネガティブの転移・再発(最初の治療から) |
| 打ち方 | 3週間のうち2回(1日目と8日目) | 3週間に1回 |
| 出やすい副作用 | 白血球の減少、下痢 | 口内炎、目の乾き、間質性肺疾患 |
| 承認 | 2024年9月(トリプルネガティブ)、2026年3月(ホルモン陽性) | 2024年12月(ホルモン陽性)、2026年9月(トリプルネガティブ) |
2026年9月時点。承認の範囲は変わることがあるので、添付文書で確かめてください。
検査をしないのはなぜ
HER2をねらう薬は、HER2がたくさんある人にしか効かないので、免疫染色やFISH法で陽性か陰性かを調べてから使います。
TROP2は乳がんのほとんどで高く出ていて、臨床試験でも、TROP2の量が多い人と少ない人で薬の効き目に大きな差がありませんでした(ASCENT試験の最終解析、TROPiCS-02試験)。量で対象を絞る意味が薄いので、検査はせずに使います。
HER2との違い
HER2は「もっと増えなさい」という命令を受け取るアンテナで、抗HER2療法はそのアンテナの働きそのものを止めます。
TROP2は、がん細胞の増え方に関わってはいますが、薬はその働きを止めるためではなく、抗がん剤をがん細胞まで運ぶ「めじるし」として使っています。だからTROP2をねらう薬は、抗体だけの薬ではなく、抗がん剤をくっつけた抗体薬物複合体(ADC)です。
関連する用語
免疫関連有害事象催吐性リスクトリプルネガティブ乳がんBRCA1/2ホルモン陽性・HER2陰性乳がんホルモン陽性・HER2陽性乳がんOncotype DXHER2