みなさん、乳がん治療で抗がん剤をやるタイミングが、手術の「前」と「後」の2種類あるってご存じですか?
実は、いくつかの条件を満たす方は、手術前の抗がん剤治療(NAC:Neoadjuvant Chemotherapy)を行うことが勧められることがあるんです。
そして時に、手術前の抗がん剤をやるかどうか、ご自身に選択を迫られることも。
今回は手術前に抗がん剤をおこなうことのメリットとデメリットを整理して、みなさんが納得して治療に臨めるようにお手伝いしていきますね。
手術前に抗がん剤(NAC)をおこなうメリット
術前抗がん剤の良いところ
- しこりを小さくして、部分切除が可能になる
- リンパ節転移を消せる可能性
- 薬の効き具合を実際の体で確認できる
- 効きが良ければ、術後の治療を軽くできる
- 効きが悪ければ、術後の治療を強化できる
特にHER2陽性やトリプルネガティブのタイプでは、手術前の抗がん剤の効き具合に応じて術後の治療を調整できることが、生存率の改善につながると分かっています(たとえば効きが不十分だった場合に、術後の薬を強化します)。
ただし、これは手術前の抗がん剤で効きが悪かったひとに限った話で、抗がん剤をおこなったひと全体でみると、手術の前でも後でも生存率に差はなかったというデータもあります。
つまり、もしあなたがエスパーで、治療をはじめる前に「抗がん剤の効きが悪い」ということが予知できるのであれば、先に抗がん剤をやっておくと手術後の治療を強化できるので生存率の改善につながる、、、ということですね。
手術前に抗がん剤をおこなうデメリット・注意点
術前抗がん剤のよくないところ
- 抗がん剤の副作用が手術の前に来る(手術をする頃には脱毛や疲労感があるなど)
- がんが体にいる時間が長くなる(手術が3〜6ヶ月後)
- 術前に効きが悪く、かえって状況が悪化してしまうことがある(その場合は急いで手術へ)
- 抗がん剤中に転移を起こしてしまうと、手術ができなくなる可能性がある
- 抗がん剤の副作用で、手術に耐えうる体力を失うことがある
手術前の抗がん剤治療が特に推奨されるケース
NACが選ばれやすい乳がん
- ステージⅢBまたはⅢC(局所進行)
- HER2陽性乳がん
- トリプルネガティブ乳がん
- 部分切除を希望するが、しこりが大きい
- 炎症性乳がん
逆に、Luminal Aっぽい乳がん(ホルモン陽性HER2陰性、Ki-67低)では、NACの効きが比較的弱いため、先に手術することが多いです。
NACで「がんが完全に消えた」場合(完全奏功:pCR)
NAC終了後の手術で、しこりも含めてがん細胞が完全に消えていたことを「pCR(病理学的完全奏効)」と言います。
NACで「ぜんぶ消えた」とわかっても、手術はおすすめされます。なぜなら、手術で乳房をとって、顕微鏡レベルで生き残りがいないことを確認しなければ、確実にすべての乳がん細胞がいなくなったとは言い切れないからです。画像では見えなくても、顕微鏡レベルで残っているかもしれない——ということですね。
まとめ
※この記事は一般的な医学情報です。実際の治療方針は、病状、検査結果、体調、価値観によって異なります。必ず主治医と相談してください。