ペムブロリズマブ併用療法(周術期)
ぺむぶろりずまぶへいようりょうほう(Perioperative pembrolizumab plus chemotherapy)
トリプルネガティブ乳がんの手術前後に使う、いまいちばん強い治療だよ。
抗がん剤に、免疫のブレーキを外してがんを攻撃させる薬、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)を足して、手術のあとも約半年続けるんだ。
効き目はしっかり証明されているけど、全部で約1年と長いこと、抗がん剤の副作用に加えて免疫の副作用(irAE)にも気をつけることが、この治療の特徴だよ。
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ステージⅡ〜Ⅲのトリプルネガティブ乳がんに対する、手術の前から手術のあとまで続ける治療。手術の前にパクリタキセル(毎週)+カルボプラチン+ペムブロリズマブを12週間、続いてAC/EC+ペムブロリズマブを12週間行い、手術のあとはペムブロリズマブ単剤を3週間に1回、9回(27週間)続けます。KEYNOTE-522試験で、抗がん剤だけの治療にくらべて病理学的完全奏効率・無イベント生存・全生存の改善が示されました。
基本情報
- 使う場面
- ステージⅡ〜Ⅲの トリプルネガティブ乳がん
- 投与間隔
- 3週間に1回 ※パクリタキセルは毎週。カルボプラチンは施設によって3週間に1回または毎週
- 期間
- 手術の前に24週間、手術のあとに27週間(全体で約1年)
- 催吐性リスク
- 手術の前①は中等度、手術の前②は高度、手術のあとは最小
- 使用される薬剤
- ペムブロリズマブ(キイトルーダ) パクリタキセル (タキソール) カルボプラチン (パラプラチン) ドキソルビシン (アドリアシン) エピルビシン シクロホスファミド (エンドキサン)
- 治療する場所
- 外来 ※施設によって初回のみ入院
治療スケジュール
カルボプラチンの打ち方は施設によって違います。
よくある副作用
| 症状 | 対処法 |
|---|---|
| 吐き気・嘔吐 | 点滴の前と、そのあと数日間、予防の吐き気止めを使います。AC/ECの期間(手術の前②)がいちばん強い |
| だるさ | 投与のあと数日がいちばん強く、次の投与までに回復します。無理をせず休む |
| 脱毛 | 治療をはじめて2〜3週間後から抜けはじめます。治療が終わればまた生えてきます。ウィッグや帽子は早めに準備 |
| 白血球(好中球)の減少 | 投与の7〜14日後ごろにいちばん下がります。手洗いと、人混みを避けること。熱が出たらすぐ連絡 |
| 貧血 | 治療が進むほど出やすくなります。動悸や息切れ、立ちくらみが強いときは主治医へ。輸血で対応することもあります |
| 手足のしびれ | パクリタキセルで出ます。指先から始まり、回を重ねるほど強くなります。ボタンがかけにくい、つまずくなどの支障が出る前に主治医へ |
| 下痢・便秘 | 水分をしっかりとる。下痢が続くときは市販薬で様子を見ず、まず連絡(免疫の副作用のことがあります) |
| 点滴中のアレルギー反応 | 顔のほてり、息苦しさ、じんましんなど。予防の薬を使ったうえで点滴します。点滴の最中に異変を感じたら、その場で看護師に |
| 甲状腺の働きの変化 | 免疫の副作用でいちばん多いもの。動悸・汗のあと、だるさ・むくみに変わります。血液検査で見つけて、飲み薬で補います。治療が終わったあとに出ることも |
| 皮膚の発疹・かゆみ | 保湿と塗り薬で対応します。広がる、水ぶくれになる、口の中まで荒れるときはすぐ連絡 |
病院に連絡する目安
すぐに連絡
- 38℃以上の熱が出た(とくに投与の7〜14日後ごろ)。夜間や休日でも (発熱性好中球減少症)
- 息切れ・空咳・胸の痛みが出てきた (免疫関連有害事象)
- 激しい下痢・血便・強い腹痛 (免疫関連有害事象)
- 水をたくさん飲む・尿が増える・急にひどくだるい (免疫関連有害事象)
- 点滴の最中に、息苦しい・じんましん・顔がはれた。その場で看護師に (インフュージョンリアクション)
その他の基準
- 手足のしびれで、ボタンがかけにくい・つまずく
- 動悸や汗が続く、または、だるさ・むくみ・寒がりが出てきた
- 発疹やかゆみが広がってきた
- 口内炎で食事がとりにくい
- 眠れない、気分が落ち込む
迷ったら連絡してください。免疫の副作用は治療が終わったあとに出ることもあるので、治療後に気になる症状が出たときも、この治療を受けたことを伝えて相談を。
カルボプラチンの打ち方が施設で違う
KEYNOTE-522試験では、カルボプラチンを「3週間に1回、多めに」打つ方法と、「毎週、少なめに」打つ方法のどちらも認められていました。効き目に差はなく、どちらを使うかは施設の方針で決まります。
3週間に1回のほうは通院が少なくてすむぶん、投与のあとの吐き気が強めで、血小板が下がりやすい傾向があります。毎週のほうはパクリタキセルと同じ日に打てるので通院回数は変わらず、1回あたりの副作用は軽めです。
免疫関連有害事象(irAE)について
この治療を受けた人の3人に1人に、何らかの免疫の副作用が出ました。いちばん多いのは甲状腺で、働きが落ちるのが7人に1人、働きすぎになるのが20人に1人。次いで皮膚の強い反応が100人に6人、副腎の働きの低下と肺の炎症がそれぞれ100人に2〜3人です。
重いもの(グレード3以上)は8人に1人ほどでした。ほとんどは治療をいったん休む、ステロイドを使う、足りなくなったホルモンを飲み薬で補う、といった対応で落ち着いています。
抗がん剤の副作用と違って、体のどこに出るか分からないこと、治療が終わってから出ることがあることが特徴です。
臨床試験
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KEYNOTE-522(病理学的完全奏効)
ステージⅡ〜Ⅲのトリプルネガティブ乳がん1,174人を、抗がん剤にペムブロリズマブを足す群と、抗がん剤だけの群に分けた試験です。手術のときにがんが完全に消えていた人の割合は、ペムブロリズマブを足した群で64.8%、抗がん剤だけの群で51.2%でした。
Schmid P, et al. N Engl J Med. 2020;382:810-21. PubMed
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KEYNOTE-522(無イベント生存)
同じ試験の続報です。3年の時点で、再発や進行などのイベントなく過ごせていた人の割合は、ペムブロリズマブを足した群で84.5%、抗がん剤だけの群で76.8%でした。
Schmid P, et al. N Engl J Med. 2022;386:556-67. PubMed
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KEYNOTE-522(全生存)
同じ試験の続報です。5年の時点で生存していた人の割合は、ペムブロリズマブを足した群で86.6%、抗がん剤だけの群で81.7%でした。手術のときにがんが完全に消えていた人の経過は、どちらの群でもとても良好でした。
Schmid P, et al. N Engl J Med. 2024;391:1981-91. PubMed
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参考資料
- 制吐薬適正使用ガイドライン2023年10月改訂 第3版(日本癌治療学会 編)
- G-CSF適正使用ガイドライン2022年10月改訂 第2版(日本癌治療学会 編)