非浸潤性小葉癌
ひしんじゅんせいしょうようがん(Lobular Carcinoma in situ)
非浸潤性小葉癌は、名前に「癌」がつきますが、乳癌取扱い規約 第19版では悪性腫瘍の枠に置かれていません。異型小葉過形成とともに、非浸潤性小葉腫瘍という別の枠にまとめられています。がんになる前の段階(前駆病変)と、がんになりやすいことを示す目印(リスク病変)の、両方の性質をもつためです。
ただし、3つある亜型のうち開花型と多形型は、古典型とは扱いが変わります。ご自身がどの亜型かを主治医に確認してください。
乳癌診療ガイドライン2026年版(日本乳癌学会 編)
概要
乳腺の終末乳管小葉単位に発生する、細胞どうしの接着性に乏しい異型細胞からなる上皮内病変。腫瘍細胞によって拡張した腺房が終末乳管小葉単位内の50%を超えるものをいう。多くの症例で細胞接着因子であるE-cadherinの機能不全がみられる。古典型、開花型、多形型の3つの亜型があり、亜型によって臨床的な位置づけが異なる。
小葉のいちばん奥、母乳をつくる部屋のなかで、がんに似た細胞が増えている状態だよ。部屋の壁の外には出ていないんだ。
乳管のほうで同じことが起きるのが非浸潤性乳管癌で、こちらはマンモグラフィで石灰化として見つかることが多い。でも非浸潤性小葉癌は症状もなく画像にも写らないことが多くて、別の理由で取った組織のなかからたまたま見つかることがほとんどだよ。
- 関係するひと
- 生検や手術の病理結果で指摘されたひと
- 決まるタイミング
- 針生検や手術の病理結果が出たとき
- 調べる方法
- CNB(針生検)VAB(吸引式組織生検)手術の結果
3つの亜型
亜型によって、どう位置づけられるかが変わります。ここがこの病変のいちばん大事なところです。
| 亜型 | 顕微鏡で見えるもの | 位置づけ | 外科的切除(欧米) |
|---|---|---|---|
| 古典型 | 腺房の広がりが50%を超える | 前駆病変かつリスク病変 | 状況により必須ではない |
| 開花型 | 腺房や乳管が著明に拡張する | 浸潤癌に進みやすい前駆病変 | 推奨される |
| 多形型 | 核の多形性が顕著 | 浸潤癌に進みやすい前駆病変 | 推奨される |
いちばん右は、欧米のガイドラインに書かれている内容です。日本のガイドラインは、欧米ではこうなっていると紹介する形で書いています。欧米のなかでも国によって違いがあり、日本での方針は施設や状況によって変わります。ご自身がどうするかは主治医と相談してください。
開花型は、腺房や乳管が腫瘍細胞40〜50個分の直径にまで広がります。多形型は、核の腫大がリンパ球の4倍を超えます。どちらも面疱壊死や石灰化をともなうことがあります。
開花型と多形型は非浸潤性乳管癌との区別が難しいことがあり、E-cadherinの免疫染色が判定の助けになります。
乳癌診療ガイドライン2026年版(日本乳癌学会 編)を元に作成
古典型のその後
古典型では、その後に乳がんが見つかる割合が報告されています。
| 指標 | 数字 |
|---|---|
| 1年あたりに乳がんが見つかる割合 | 2%ほど |
| 一般の人と比べたときの倍率 | 8〜10倍 |
| 生検のあとの手術で乳がんが見つかる割合 | 3〜6%ほど |
いちばん下は、針生検で古典型と診断されたあとに手術をして、浸潤癌や非浸潤性乳管癌が見つかった割合です。報告によって0〜45%と幅がありますが、画像所見と合わない例などを除くとこの範囲になります。
リスク病変は、その場所だけでなく左右どちらの乳房もがんになりやすくなる、という意味です。
乳癌診療ガイドライン2026年版(日本乳癌学会 編)を元に作成
判定の流れ
- 針生検や手術で取った組織を、ヘマトキシリン・エオジン染色で見る
- 腺房の広がりが終末乳管小葉単位内の50%を超えるかを見る(50%未満は異型小葉過形成)
- 細胞の見た目と腺房の広がりで、古典型・開花型・多形型に分ける
前駆病変とリスク病変は、別のものです
この病変を理解するには、似ているようで違う2つの言葉を分けて考える必要があります。
前駆病変は、そこから浸潤癌に進みうる病変のことです。その場所が将来がんになる、という話です。
リスク病変は、その病変があることで、左右どちらの乳房にもがんが発生しやすくなる病変のことです。その場所だけの話ではなく、乳房全体に関わる目印のような扱いになります。
非浸潤性小葉癌は、この両方の性質を併せもっています。だから、規約でも悪性腫瘍とは別の枠に置かれています。
日本では、長いあいだ悪性腫瘍として扱われてきました
以前は非浸潤性小葉癌をすべて悪性腫瘍として扱っていました。そのため、いまも扱いに一定の混乱が生じている、とガイドラインに書かれています。
亜型が明記されたのは規約第19版からです。過去に説明を受けた内容と、いま調べて出てくる内容が食い違うことがあります。気になることは主治医に確認してください。
診断そのものに、ばらつきがあります
針生検で取れる組織は限られるため、手術で全体を見ると診断が変わることがあります。亜型の判定にも、施設や病理医による差があることが知られています。
このため、画像で見えているものと病理の結果が合わないときには、どの亜型であっても病変を取って確かめることがすすめられています。
関連する用語
ER(エストロゲン受容体)HER2組織学的グレード組織型ホルモン受容体ホルモン陰性・HER2陽性乳がんホルモン陽性・HER2陰性乳がんホルモン陽性・HER2陽性乳がん浸潤性小葉癌非浸潤性乳管癌CNB(針生検)
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参考資料
- 乳癌診療ガイドライン2026年版(日本乳癌学会 編)
- 乳癌取扱い規約第19版(日本乳癌学会 編)